2007/07/27 オシム来日の真意

日本代表監督のオシムが、2003年に極東のサッカー後進国日本の弱小チームジェフにやってきたのは何故か、このことについてあまり知られていないように思います。

祖母井さんが熱心に誘ったとか、東京オリンピックで来日時に日本に親近感を持ったとか、FIFA技術委員長のジェフ前任監督ベングロッシュさんの口利きがあったとか、その他いろいろの見方があるようですが、私は以前からオシムは自分の理想とする美しいサッカーをどこまで追求できるか、日本ならば試せると考えて、来日したのだと思っています。

オシムの理想のサッカーとは何か、これまでの言動から推察し、間違い覚悟で一言で言うと、「リスクを恐れず、流れるような動きから点を多く奪う攻撃的サッカー」ではないかと思っています。本当はもっと奥が深いのでしょうが、残念ながら素人にはオシムの心の中を推し量ることができません。

ジェフでも、最初のインタビューで、攻撃的で危険なチームを作るといっていますし、失敗しても繰り返し2バックを試みました。欧州の有力チーム、例えば、オシムに監督就任要請をしたリアルマドリードなどでは、勝つことが最優先され、点をボロボロ失うようなサッカーをしたら、袋叩きにあうでしょう。ユーゴ監督時代は民族問題も絡んで政治家まで介入してきたと聞いています。そこへいくと、日本では監督批判など穏やかなものです。オシムにとって、批判にさらされず、心置きなく自分の理想とするサッカーを追求できる、理想的な地が日本だったということです。これはイヴィツァだけでなく息子アマルについても言えることかな、と最近感じています。

サウジアラビア戦の敗戦の後の会見で、オシムは次の様に言っています。

「我々はリスクを冒してプレーしていたということだ。リスクを冒すということは失点する確率も高いということ。相手の2トップに対して、2人のストッパーで守備を長い時間続けたわけだ。そのリスクを冒すことで、もう1つ別のポジションでフリーになる選手が1人出てくるという考え方だった。それがプレーメーカーだったり、素晴らしい選手だったりするわけだが、逆にリスク回避してリベロを置く、つまり3ストッパーを相手の2トップにつけるとするならば、中盤での数的優位を失われることになる。そのどちらを選ぶかだが、私は今のサッカーの信奉者である。その方が魅力的ではないだろうか。その方がオープンなゲームになるし、美しいフットボールになる」

まさにオシムの考え方の根幹を述べているように思います。サウジ戦の敗戦は、オシムの理想追求の代償でした。しかし、W杯でベスト4を目指すとしたら、オシムの理想に殉教するしかないように思います。日本人の体格、身体能力、技術レベルでは、W杯チャンピオンイタリアのような点を失わないサッカーは不可能です。
オシムの考え方を実現できる選手がどれだけ現れるか、ここ3年間の大きな楽しみです。